忘れるときも忘れないときも

公益財団法人エイズ予防財団 柏崎正雄

 エイズについて初めて知ったのは、14歳のとき。妊娠についての知識さえも曖昧だったときに、セックスで感染する病気と言われてもピンと来ませんでした。男子トイレの便器からは映らないのかな?とか、自分のセクシュアリティ(ゲイ)とエイズの関係はどうなんだろう?とか、考えたりしていました。その程度の知識でした。

 18歳を過ぎてから、友だちも増え信頼できる人もできました。その中には、HIVと生きている人たち(HIV陽性者)も何人もいます。話したり遊んだりするとき、初めはHIVの話をたくさんしていたように思い出すものの、時間が経つと逆に敢えて話さないと忘れるときもあります。当たり前という感じになるというか。

 20年近く経っても、友だちとも家族とも仕事の人たちとも、そして自分自身でもエイズについて「忘れない」からこそ、人とのつながりのときに、HIVを忘れる(意識しすぎない)ときもあるんだな、とそう思ったりします。