とはいえ、分厚い報告書を英文で読めと言われてもねえ、とお嘆きの皆さんは少なくない・・・というか、日本国内では多少ともエイズ対策に関心のあるという奇特な人たちの間ですら、圧倒的多数を占めているのではないかと思います。ぐっと短いニュースレリースもあるのですが、こちらも英文。
そんな殺生な。日本国内で話題にされることもなく埋もれてしまうのではあまりにも惜しいということで、世界基金支援日本委員会が、世界基金のインパクト評価課長である小松隆一課長に寄稿をお願いしました。さすがは小松さん、《2012年世界基金成果報告書に基づく、個人的見解である》とことわっていますが、非常に簡潔かつ分かりやすく、まとめられています。図表もふんだんに紹介されているので、助かりますね。
世界基金が支援するプログラムの2012年中期までの成果は以下の通りです。
360万人がエイズ治療を実施中
930万人の結核を治療
2億7千万帖の殺虫剤効果のある蚊帳を配布
そして、「これらの成果により870万の命を救うことができた」と推計されています。
もっと、詳しく説明されているのですが、ここであれこれ書くより、直接、小松さんの寄稿をご覧いただいた方が良さそうですね。
http://www.jcie.or.jp/fgfj/06/2012/20121001.html
世界基金はこの10年、大きな成果をあげてきた一方で、最近は運営の効率化などを求める批判にもさらされています。2012年は《効率と効果をさらに挙げるため、「インパクトへの戦略的投資」に焦点を当てた2012-16年度新戦略を実施し始めた》という意味でも節目の年ですね。11月の理事会では新しい事務局長が就任する見通しですが、小松レポートによると《世界基金理事会での発言力も増し、現在は、新事務局長選出委員会議長という高い信用が必要な職に日本人が任されている》ということです。
そもそも世界基金創設の最初のきっかけをつくったのは日本だと言われています。その縁もあって、世界基金への日本の貢献は21世紀の最初の10年間における輝かしい外交的成果としても高く評価されています。それが最初の10年で終わってしまうのはあまりにも惜しい。言い出しっぺの神通力も10年を過ぎればもちません。中身のある貢献がいまこそ必要です。正念場というべきでしょう。
《日本の貢献が引き続き評価されるためにも今後もオールジャパンでの支援と協力が期待されている》
このあたりの「個人的見解」は、日本のHIV/エイズ分野の関係者としても広く共有していきたい認識ですね。