HIV/エイズ対策を例にとれば、年間の新規HIV感染数も、エイズ関連の死者数も減少の傾向を示すようになっています。ただし、それでもなお国連の推計では年間230万人が新規にHIVに感染し、160万人がエイズ関連の原因で死亡しています。厳しい流行は依然として続いていると言わざるをえません。
一定期間内での集中的な努力の成果があがったからといって、それで問題が解決したわけではなく、この手応えを確実に流行の縮小へとつなげ、多くの人の生命を救うには、これまでの成果を踏まえた一層の努力と、そうした努力の継続を支える広範な社会的理解が必要となります。
HIV/エイズのパンデミック(世界的大流行)を克服し、流行を拡大から縮小へと確実に転じることができるのか、それとも息切れしてパンデミックの継続と拡大を許すことになるのか。いまがその分岐点、まさに正念場という時期にポスト2015という課題が浮上しているのです。また、こうした観点からわが国のエイズ対策をとらえていくと、実は地球規模の国際課題と不思議なほど共通した課題に直面していることも分かります。
前置きが長くなりましたが、コミュニティアクション呼びかけ人の一人であるアフリカ日本協議会の稲場雅紀氏から「ポストMDGsにおけるHIV/AIDSの扱いについて:2015年9月までに国連HIV/AIDSハイレベル会合を!」という投稿がありました。国連HIV/AIDSハイレベル会合の開催を求める国際署名の呼びかけです。国連合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シデベ事務局長宛の要請文pdf版(和文、英文)ならびに補足情報を以下に紹介します。
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署名は国際エイズ・サービス組織評議会(ICASO: International Council of AIDS Service Organizations)とオランダの「国際市民社会サービス」(ICSS)などが発足させた「ポスト2015開発課題とHIVに関する市民社会ワーキング・グループ(CSWG)」が呼びかけています。賛同してもいいなという団体は、以下の連絡票をアフリカ日本協議会の稲場雅紀さん宛にお送りください。
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★連絡票 (masaki.inaba@gmail.comまで)
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◎団体の名称
◎団体の英語名称(あれば)
◎ご担当者のお名前
◎ご担当者の役職(あれば)
◎本件声明に(1.賛同する 2.質問・問い合わせ・意見)
◎2の方は以下の欄にご自由にご記入ください。早急にご返事いたします。
(※長くなっても構いません。 )
◎その他コメント等
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以下は稲場さんによる「昨今の状況」の報告です。
ポストMDGsの策定について、各課題でいろいろな動きが起きつつありますが、この件に後れを取っていたHIV/AIDS分野でも、ようやく、モメンタムを取り戻そうという動きが始まりつつあります。
世界的なHIV/AIDSにかかわるNGOのネットワークである国際エイズ・サービス組織評議会(ICASO: International Council of AIDS Service Organizations)とオランダの「国際市民社会サービス」(ICSS)を中心に、ポスト2015開発課題とHIVに関する市民社会ワーキング・グループ(CSWG)が発足し(当方もメンバーになっています)、UNAIDSと連携して、ポストMDGsやSDGsプロセスに向けたアドボカシーを開始しました。
また、ユースのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(SRHR)のネットワークであるユース・コアリション(Youth Coalition)を軸に数十の団体が集まって、UNAIDSと連携して、ユースのエイズとSRHRをポスト2015の主要課題に、という取り組みも始まりました。(ACT2015という動きです)。
UNAIDSは、英国の医学誌ランセットと「UNAIDS-ランセット委員会=エイズに打ち勝ち、国際保健の前進を」(UNAIDS-Lancet Commission: Defeat AIDS - Advancing Global Health)を設置し、ハイレベルでのエイズに関するコミットメントの増進を図っています。この委員会には、安倍昭恵氏(安倍総理夫人)も参加しています。
こうした分野別の動きがどのように進んでいるかについてモニターしつつ、参加していくことは、ポストMDGs全体の動きをつかみ、進めていくうえでもプラスになるでしょうし、大変重要なことだと考えています。