ギャップを埋めよう UNAIDS世界エイズデー2014キャンペーン

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトに2014年の世界エイズデー(12月1日)キャンペーン特設ページが開設されました。
 http://www.unaids.org/en/resources/campaigns/worldaidsday2014

 いままで世界エイズデーの国際的キャンペーンはWorld AIDS Campaign(WAC)という国際組織がUNAIDSの協力のもとに進めていましたが、この2、3年、WACの存在感が急速に薄れてしまった印象があります。ほとんど開店休業のような感じですね。

 どうしたのかなと思ったら、去年、今年とまた、UNAIDSがキャンペーンの中心的な役割を担うようになってきました。去年はアウンサウンスーチーさんと蝶々のポスターを前面に掲げ、差別や偏見との闘いを呼びかけるキャンペーンでした。

 そして今年のテーマはこちらです。

 CLOSE THE GAP (ギャップを埋めよう)

 特設ページにはポスターなど、さまざまなビジュアル素材とともに「サンプル・プレスリリース」も紹介されています。キャンペーンはそれぞれの国、あるいは地域、都市の実情を勘案して進めていくので、参考までに「ひな型」を提供しておきましょうという感じでしょうか。
 内容は、2030年にエイズ流行終結を目指しているのだけれど、それはHIV予防、治療、ケア、支援のサービスを必要としているすべての人がそのサービスを受けられるようになって初めて実現できるということです。

 『エイズ流行の終結』という大看板は、掲げてしまった以上、下ろせないが、そうかといって簡単に実現出来るものではありませんよ。ちょっと意地悪な見方をすれば、ギャップの解消という条件を付けて、逃げ道を残しておくような印象もあるメッセージです。もちろん、いま目の前にあるギャップを埋めるために全力を尽くすという目標に反対しているわけではなく、それはそれで重要です。あえて異論をはさむ必要はないでしょう。

 日本国内のキャンペーンテーマ《AIDS IS NOT OVER〜まだ終わっていない〜》とも矛盾するものでもありません。いまこそ、一段と力を入れてエイズ対策に取り組む必要があるという点では、認識は共通しています。違いがあるとすれば、どちら側から強調するかという角度のあて方の相違でしょう。

 なお、エイズ流行の終結についてUNAIDSは次のように定義をしています。HATプロジェクトが9月29日に紹介した《2030年のエイズ流行終結に向けた「高速」対応を各国が準備》というUNAIDSプレスリリースの日本語仮訳からその定義部分を改めて紹介しておきましょう。
 http://asajp.at.webry.info/201409/article_2.html
 《エイズの流行の終結とは、HIV感染の拡大が制御または封じ込められ、社会及び個人の生命に対するウイルスの影響が非常に小さくなり、結果として健康障害 や偏見、死亡、孤児などが大きく減少する状態を意味する。また、エイズの影響が低下することにより、平均余命が長くなり、人々の多様なあり方や権利が無条 件に受け入れられ、生産性が向上し、コストが下がることも意味している》

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 今年のテーマ CLOSE THE GAP に関するUNAIDSのサンプルプレスリリースの日本語仮訳も以下に掲載しておきます。


ギャップを埋めよう 世界エイズデー (世界エイズデー2014 サンプル・プレスリリース)
 2030年のエイズ流行終結に向けて、2014年12月1日からギャップを埋めていこう
 http://www.unaids.org/en/WAD2014pressrelease

【都市、日付】 2014年の世界エイズデーは人に焦点をあてギャップを埋めていくために社会変革の力を利用する大きな転機です。HIV予防、治療、ケア、支援のサービスへのアクセスがある人とそうしたサービスを受けられずに取り残されている人とのギャップを埋めることで初めて、2030年までにエイズ流行を終結させることが可能になります。

 ギャップを埋めるとはつまり、必要なサービスが得られるようにすべての人を励まし、力づけるということです。

・HIV検査のギャップを埋めれば、HIVに感染していることを知らないでいる1900万の人が支援を得ることができるようになります。
・治療のギャップを埋めれば、3500万人のHIV陽性者全員が生命を救う治療を受けられるようになります。
・子供用治療薬へのアクセスのギャップを埋めれば、HIV陽性の子供全員が治療を受けられるようになります。残念ながらいまは24%にとどまっています。
・アクセスのギャップを埋めることで、すべての人が解決策の一翼を担えるようになるのです。

 ギャップを埋めることが、2030年のエイズ流行終結は可能だということになるのです。

Facebook https://www.facebook.com/pages/World-Aids-Day-2014/304661839724336



Close the gap this World AIDS Day
On 1 December 2014, help to close the gap to end the AIDS epidemic by 2030

City, date―World AIDS Day 2014 is an opportunity to harness the power of social change to put people first and close the gap. Ending the AIDS epidemic by 2030 is possible, but only by closing the gap between people who have access to HIV prevention, treatment, care and support services and people who are being left behind.

Closing the gap means empowering and enabling all people, everywhere, to access the services they need.

・By closing the HIV testing gap, the 19 million people who are unaware of their HIV-positive status can begin to get support.
・By closing the treatment gap, all 35 million people living with HIV will have access to life-saving medicine.
・By closing the gap in access to medicines for children, all children living with HIV will be able to access treatment, not just the 24% who have access today.
・By closing the access gap, all people can be included as part of the solution.

Closing the gap means that ending the AIDS epidemic by 2030 is possible.