高速対応で2030年に国際保健の脅威としてのエイズ流行を終結 UNAIDSが新報告書

 世界エイズデー(12月1日)を前に国連合同エイズ計画(UNAIDS)が新たな報告書『高速対応:2030年のエイズ終結に向けて』を発表しました。そのプレスリリースの日本語仮訳がHATプロジェクトのブログに掲載されています。

 《高速対応で2030年に国際保健の脅威としてのエイズ流行を終結 UNAIDS報告書》
 http://asajp.at.webry.info/201411/article_6.html

 プレスリリースにもあるようにUNAIDSの考える「エイズ流行の終結」はあくまで、「国際保健の脅威としての流行」の終結です。HIV感染がまったくなくなるというわけではありません。また、世界中からHIV陽性者がひとりもいなくなるというような状態を目指しているわけでもありません。

 UNAIDSが報告書の中で示している表を紹介しておきましょう。

高速対応目標
2020年
2030年
治療
90-90-90
95-95-95
成人の年間HIV新規感染
50万人
20万人
差別
ゼロ
ゼロ

 90-90-90は、2020年時点で、世界中のHIV陽性者の90%が検査を受けてHIVに感染していることを知り、そのうちの90%がHIV治療を受け、さらにそのうちの90%が治療の効果で体内のウイルス量が検出限界以下になっている状態を目指すということです。

 それが実現すると、90×90×90で、HIV陽性者の72.9%は体内のウイルス量が検出限界以下となり、性行為などで他の人にウイルスが感染することはほとんどなくなる。つまり、治療の普及が高い予防効果を持つということになります。

 UNAIDSはさらに2030年にこの目標を95-95-95に引き上げることを考えています。こうなると、95×95×95なので・・・・ま、計算は皆さんにお任せしましょう。

 ただし、2030年に95-95-95が実現したとしても、新規HIV感染がゼロになるわけではありません。年間20万人がHIVに新たに感染すると推計されています。2013年の新規HIV感染者推計は210万人だったので、そのざっと10分の1に減るということですね。この状態が「国際保健の脅威としてのエイズの流行の終結」ということになります。

 つまり、HIVに感染している人が存在していない世界を目指すとか、HIV陽性者の排除が前提になった目標を掲げているということではまったくない。表の「差別」の欄には2020年も2030年もともに「ゼロ」と記載されています。この一事をもってしても、それは明らかではないかと思います。