「エイズはもういい」で本当にいいのか

 東京・三田の慶應義塾大学で4月17日に開催されたピーター・ピオット回想録「ノー・タイム・トゥ・ルーズ―エボラとエイズと国際政治」出版記念セミナーの様子がグローバルファンド日本委員会のサイトで3回にわたって紹介されています。

 エボラウイルスの発見者の一人であり、国連合同エイズ計画(UNAIDS)創設時から事務局長として世界のエイズ対策の牽引役を果たしてきたピオット博士のお話は興味が尽きません。セミナーには《保健医療分野の方々、国際機関やシビル・ソサエティの代表、国際関係に関心のある学生など約130名》が参加したということです。実は申込みがあまりに多く、予定を1週間早めて募集を締め切らなければならなかったほどでした。当日出席できなかった方のためにピオット博士のコメントのいくつかを紹介しておきましょう。

 もっと読ませろという方はぜひ、グローバルファンド日本委員会のサイトで報告3部作をご覧下さい。
 http://fgfj.jcie.or.jp/
 (写真はグローバルファンド日本委員会提供)

   ◇

 《地域や社会にもよりますが、かなり変わったと思います。特に欧州ではエイズの流行が契機となり変わりました。私がまだ若かった頃、ベルギーでは同性愛は違法でしたが、今は同性結婚が認められるようになりました。このように同性愛が受けられるようになった社会もあれば、同性同士のセックスで死刑になる国もあります。同性愛者だけでなく、世界中に多くの人が様々な理由で差別を受けています。だから、私たちの道のりはまだ長いです》

 《皆さんにお伝えしたいことは、多くの人の命を救い、政策を変えたいと思うなら、焦らずに長期的な目標と戦略を持つことです。ある程度は頑固であっていい。決めた目標を実現するために、余計なことに時間を費やさないことが大切です。No Time to Loseです》

 《私たちはエイズの対策で大きな成果を成し遂げてきました。途上国では今1500万人がAVR治療を受けています。15年前にはとても考えられなかったことであり、国際社会が共同で成し遂げたことを、私たちは誇りに思うべきです》

 《しかし、最近、エイズは終わったかのような見方を耳にします。エイズはもういい、さあ次の課題だ、と。それは間違っています。いまだに毎年、200万人近くが新たに感染し、日本でも毎日4〜5人が感染しているのです。私たちは引き続き努力しなければいけません。今年12月に日本でグローバルファンドの増資準備会合が開かれますが、日本が2015年後のエイズ対策に向けて大きなリーダーシップを発揮する良い機会です》