厚生労働省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱する2016年度世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマが上記のように決まりました。コミュニティアクション(ca-aids)もこのテーマを積極的に活用しつつ、コミュニティ主導のキャンペーンを応援していきます。
キャンペーンのテーマは過去2年、「AIDS IS NOT OVER」を共通メッセージとして掲げてきました。
2014年 AIDS IS NOT OVER 〜まだ終わっていない〜
2015年 AIDS IS NOT OVER だから、ここから
治療の進歩や予防対策の普及で、わが国の新規HIV感染者・エイズ患者報告数はこの10年近く、年間1500件前後でほぼ横ばいとなり、年によっては微減の状態で推移しています。報告ベースとはいえ、こうした傾向が維持されてきたのは、国および地方自治体、保健医療関係者、研究者、民間のエイズNGO/NPO、HIV陽性者組織、企業などの関係者が協力して対策に取り組んできた成果として評価することができます。
ただし、その努力と成果をもってしても、報告が大きく減少するところまでは至っていません。流行の拡大に歯止めをかけ、さらに縮小へと転ずることが、世界に共通するHIV/エイズ対策の大きな目標だとすれば、わが国はその第一段階は達成したものの、第二段階への課題はいまなお残されています。
また、最近は10代、20代の若年層への感染の広がりをうかがわせる傾向も見られます。エイズの流行はまだ終わっていないし、終息に向かっているわけでもありません。
AIDS IS NOT OVERはその現実を直視するメッセージとして2014年から採用されてきました。
エイズ予防指針で個別施策層(注1)として規定される人たちへの理解と支援を広げ、検査と治療の普及をはかることで、新規の感染を減少へと転ずることができるのか、あるいは社会的な関心の低下にあわせ対策の継続意欲までが失われていき、新規感染の拡大を再び招くことになるのか。現状はまさしく、その分岐点にあります。
そうした現状への認識を踏まえ今年はもう一度、AIDS IS NOT OVERを取り上げるとともに、「知っていても、分かっていても」という新たなメッセージを加え、全体のテーマとしました。諦めているわけではありません。
エイズについて知ろう、情報を伝えようというメッセージはこれまでにも繰り返し、さまざまな機会に伝えられてきました。もちろん、正確な知識を得ることは大切です。
ただし、それだけではエイズの流行は終わらないし、HIV感染を防ぐこともできません。「知っていても、分かっていても」という逆説的表現が生み出す小さな驚きは、「正確な知識を踏まえ、次はどう行動するのか」を考える機会になります。
それは検査を受けに行くことかもしれないし、HIV陽性者の支援やHIV感染の予防活動に取り組む人たちを訪ね、話を聞いてみることかもしれません。知っていても、分かっていても、そこで終わらない。人はそれぞれ、違っていることが魅力であるように、その行動もまた多様な可能性に満ちています。
(注1)『個別施策層(感染の可能性が疫学的に懸念されながらも、感染に関する正しい知識の入手が困難であったり、偏見や差別が存在している社会的背景等から、適切な保健医療サービスを受けていないと考えられるために施策の実施において特別な配慮を必要とする人々をいう)』(エイズ予防指針から)
現行エイズ予防指針では以下の5グループを個別施策層としている。
(1) 性に関する意思決定や行動選択に係る能力の形成過程にある青少年
(2) 言語的障壁や文化的障壁のある外国人
(3) 性的指向の側面で配慮の必要なMSM(男性とセックスをする男性)
(4) 性風俗産業の従事者及び利用者
(5) 薬物使用者